隠れた名作「青い空を、白い雲がかけてった」の電子書籍化を望む





日本の漫画文化は他国に例がないほど発展し作品数も桁違いに多いので、その中には「隠れた名作」と呼ばれ時代の流れとともに埋もれてしまうものがたくさんある。
あすなひろし著「青い空を、白い雲がかけてった」もそんな隠れた名作の一つである。
作品の舞台は1970年代の中学校。当時の中学校にもいじめはあった。だがいじめる奴等よりいじめを止めに入る生徒が圧倒的多数だった時代。いじめが原因の自殺などありえなかった。
だが現代とは逆に若者が多い時代だったので受験戦争は過酷。そのため受験ノイローゼによる十代の自殺が社会問題化した。

この作品の登場人物は皆ありふれた1970年代の少年少女だ。
そう当時の日本にはどこにでもいたような本当にありふれた中学生たちなのである。
繊細である。多感である。日常生活の些細なできごとですぐ傷つき落ち込む。
そんな彼らのありふれた、しかし本人たちにとっては大切な日常と登場人物それぞれの内面を丁寧に描いた人間ドラマである。
萌えの要素はないが何気ない日常を丁寧に描くという点は現代の萌えアニメに通じるものがあるかもしれない。

隠れた名作と呼ばれる理由
当時この作品が連載された少年チャンピオンの他の作品が偉大すぎたのが原因だ。
ブラックジャックにドカベンにがきデカにマカロニほうれん荘など後世に語り継がれる名作が山ほど連載されていた。
そしてこの時代のチャンピオンの「隠れた名作」というと多くの人が吉森みき男先生の野球漫画「しまっていこうぜ!」を真っ先に思い浮かべる。優れた作品で連載も長期に渡ったが野球漫画ファンの注目がドカベンに集まってしまったので隠れてしまったのだ。他にも「手っちゃん」なども隠れた名作と言われている。
つまり「青い空を、白い雲がかけてった」は当時のチャンピオンの隠れた名作の中でもさらに隠れてしまった二重隠れ名作といえる。
どんなに素晴らしい作品でも存在そのものが知られていなければ復刊しても売れない。「青い空を、白い雲がかけてった」も数年前に復刊されたがすぐに絶版。現在は元のチャンピオンコミックスと復刊コミックともども入手困難で状態の良いものは高値で取引されている。
このような作品こそ赤字在庫を抱えるリスクのない電子書籍で出版するべきだろう。
はっきり言ってブラックジャックの電子書籍出版なんか後回しでいいのだ。ブラックジャックはどこの古本屋に行っても状態の良い古本が安値でごろごろ転がっているのだから。

「青い空を、白い雲がかけてった」はNHKの漫画評論番組「BSマンガ夜話」でも取り上げられた。激辛評論が多いこの番組だが比較的好意的だった。
出演者の岡田斗司夫は連載当時十代の学生。まさにリアルタイムでこの作品と向き合ったのだ。そして岡田斗司夫は「十代の頃の僕は繊細すぎて他人の痛みも自分の痛みのように感じ、苦しんでいた」と語ったことがある。この岡田斗司夫の発言はまさに「青い空を、白い雲がかけてった」の登場人物の内面とシンクロしている。十代の頃の岡田斗司夫はウインドサーフィンやギター演奏など今で言う「リア充」のような生活を送っていたはずだが内面ではやはりいろんなことで悩んでいたようだ。オタキングもかつてはありふれた十代の若者だったのだ。
大人になった岡田斗司夫が朝日新聞で人生相談を担当し他人の苦しみを取り除く仕事をしているのは「青い空を、白い雲がかけてった」の影響があったのかもしれない。